東京高等裁判所 昭和54年(行コ)6号 判決 1981年2月26日
東京都墨田区立花二丁目二六番一号
控訴人
澤田光国
右訴訟代理人弁護士
真部勉
同
榎本武光
同都同区東向島二丁目七番一四号
被控訴人
向島税務署長
右指定代理人
都築弘
同
吉岡栄三郎
同
国延哲夫
同
中川昌泰
主文
原判決中、控訴人の昭和四〇年分所得税についての更正及び過少申告加算税賦課決定に関する部分を、次のとおり変更する。
被控訴人が控訴人の昭和四〇年分所得税について昭和四四年一月一七日付でした更正及び過少申告加算税賦課決定のうち、所得金額四〇七万七五一三円を超える部分を取消す。
控訴人のその余の請求を棄却する。
本件のその余の控訴を棄却する。
訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。
事実
一 控訴人代理人は、「原判決を左のとおり変更する。被控訴人が控訴人の昭和四〇年分ないし同四二年分の所得税について同四四年一月一七日付でした各更正並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め被控訴人代理人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。
二 当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり訂正、付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決二九枚目裏二行目「一二か月分」を「九か月分」と訂正する。
2 同三一枚目裏七行目の次に、左のとおり加入する。「右経費のうち、不動産の広告宣伝費及び修繕費として実際に支出した額は、次のとおりである。
広告宣伝費 修繕費
昭和四〇年度 二万五三〇〇円 二万二七〇〇円
同 四一年度 一万四四〇〇円 四万三四五〇円
同 四二年度 二万三四〇〇円 九万四三四五円
ただし、昭和四二年度の広告宣伝費は、原審で認められた一万五六〇〇円を含む。」
3 同三七枚目表二行目の次に、行を変えて、左のとおり加入する。
「4 当審においてなされた広告宣伝費、修繕費の主張は、時機に後れた攻撃防禦方法の提出であつて、許されない。右主張事実中、昭和四二年度の広告宣伝費のうち一万五六〇〇円を支出した事実は認めるが、その余の事実は否認する。」
4 当審における証拠関係
(一) 控訴人
(1) 甲第三二ないし三六号証、第三七ないし四二号証の各一・二、第四三ないし四六号証、第四七号証の一ないし三、第四八号証の一・二、第四九号証、第五〇号証の一ないし三、第五一及び五二号証の各一・二、第五三号証の一ないし三、第五一及び五二号証の各一・二、第五三号証の一ないし四、第五四号証、第五五号証の一・二、第五六号証、第五七号証の一・二、第五八及び五九号証を提出
(2) 証人澤田喜行の証言を援用
(3) 後記乙号各証の成立を認める。
(二) 被控訴人
(1) 乙第四五及び四六号証を提出
(2) 甲第三五号証の成立を認め、その余の前記甲号各証の成立は知らない。
理由
一 当裁判所の事実認定、判断は、次のとおり訂正、付加するほか、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。
1 原判決四二枚目裏末行目「事実は、」の次に、「これに沿う当審における証人澤田喜行の証言及び右証書によって真正に成立したものと認められる甲第三二号証の記載は前掲各証拠に対比してにわかに信用しがたく、他に」と加入する。
2 同四三枚目裏六行目「証人澤田喜行(第一回)及び同」を「原審(第一回)及び当審証人澤田喜行並びに原審証人」と改める。
3 同五〇枚目裏二行目の次に、行を変えて、左のとおり付加する。
「また、控訴人は当審において甲第三四号証を提出し、証人澤田喜行は、当審における証言中で、右甲第三四号証は昭和四二年三月から同年一二月までのそう菜部門の仕入帳であり、これに記載された仕入額に基づいて、甲第三三号証記載のとおり、同年中の売上原価に占める肉類等の原価割合を推算すると、九三・二パーセントとなる旨供述するが、同証人における証言(第一回)と原審における控訴人の弁論の全趣旨ないし右書証提出までの本件訴訟の経過等に徴すると、右仕入帳がその当時作成され、真実を記載したものであるか否かは多分に疑問であるといわなければならず、しかも、同証人の当審における証言によっても、右甲第三三及び三四号証の記載は、必ずしも肉類等以外の商品の仕入をすべて網羅したものではないことが窺われるので、右証言にかかる推計方法は採用に値いしないものというべきである。」
4(一) 同五三枚目表一〇行目「そうしてみると」の前に、左のとおり加入する。
「更に、当審で提出された甲第三六号証の作制時期等については、前記甲第三四号証についてと同様の疑問があるうえ、これに月給として記載された金額は、控訴人主張の各使用人に対する給与の額に符合するものとは認められず、甲第三七ないし四二号証の各一・二に使用人らのサインがある旨の当審における証入澤田喜行の証言も、ただちに信用しがたいものであって、これらの証拠によって控訴人の主張を肯認するに足りない。」
(二) 同五三枚目裏末行目から五四枚目表一行目にかけて「証人澤田喜行(第一回、第二回)及び同」を「原審(第一、第二回)及び当審証人澤田喜行並びに原審証人」と改める。
5 同五八枚目裏四行目「証人澤田喜行(第一回)、同」を「甲第四六号証の記載並びに原審(第一回)及び当審証人澤田喜行、原審証人」と改め、五九枚目裏四行目の末尾から六字ないし四字目の「四一年」を「四二年」に訂正する。
6 同六二枚目裏一〇行目の冒頭に「成立に争いのない甲第三五号証は、広告であって、その記載が実際に締結された契約内容と一致するとは限らないものであるから、右認定を左右するには十分でなく、」と加入し、六三枚目表三行目「証人澤田喜行(第一回及び第二回)」を「原審(第一、二回)及び当審証人澤田喜行」と、六三枚目裏二行目「の記載及び証人澤田喜行(第一回)」を「及び甲第四五号証の各記載並びに原審(第一回)及び当審証人澤田喜行」とそれぞれ改める。
7 同六九枚目裏三行目「証人」から次行「及び右証言」までを「原審(第一回)及び当審証人澤田喜行の証言並びに右原審証書」と改め、同五行目「一ないし一一」の次に「及び右当審証言によって成立の真正が認められる甲第四四号証」と加入する。
8 同七〇枚目表八行目から同裏五行目までの全文を次のとおり改める。
「前掲甲第三五号証、当審における証人澤田喜行の証言によって真正に成立したものと認められる甲第四七号証の一ないし三、第五〇号証の一ないし三、右証言によれば、控訴人は、店舗入居者募集の広告を昭和四〇年一〇月中に三回と同四一年九月ごろ及び同年一〇月中に各一回それぞれ読売新聞に掲載し、その代金として昭和四〇年中に二万五三〇〇円同四一年中に一万四四〇〇円を支払った事実が認められる(なお、右両年中の広告宣伝費の主張及び右甲号各証は、時機に後れて提出された攻撃防禦方法にあたるが、その審理が訴訟の完結をとくに遅延させるとは認められないので、これを却下しない。)。更に、控訴人主張の昭和四二年分の広告宣伝費のうち一万五六〇〇円の支出の事実は当事者間に争いがなく、原審証人中川和夫の証言によって真正に成立したものと認められる乙第二八号証によれば、右支払は同年四月三〇日と同年五月一四日に読売新聞に掲載された広告の代金であると認められるところ、控訴人は、甲第五四号証記載の七八〇〇円を右の支払額に加算して主張するものと解されるが、右七八〇〇円は前記昭和四二年五月一四日掲載の広告に対するものであることが右甲号証の記載自体から明らかであって、右主張は、この金額を重複計上することに帰するから、採用することができず、他に右支出金額以外の支払を認めるべき証拠はない。
したがって、広告宣伝費として昭和四〇年分二万五三〇〇円、同四一年分一万四四〇〇円、同四二年分一万五六〇〇円の経費を認めるのが相等である。」
9 同七〇枚目裏六行目の次に、行を変えて、左のとおり加入し、同八行目「修繕費」を削る。
「控訴人は、当審において修繕費の実額を主張し、その証拠として甲第四八号証の一・二、第四九号証、第五一及び五二号証の各一・二、第五三号証の一ないし四、第五五号証の一・二、第五六号証、第第五七号証の一・二、第五八及び五九号証を提出するが、原審における控訴人の弁論の全趣旨に照らすと、右甲号各証の成立の真正及びその記載の真実性には疑問を抱く余地があって、この点に関する当審における証人澤田喜行の証言はただちに信用しがたく、しかも、右甲号各証記載の支出が実際にあったとしても、その中には、控訴人の家事上の経費、事業のための支出、建物付属設備として資産に計上されるべき工事に関する支出等が含まれている可能性があると考えられるところ、そのうち建物賃貸部分の修繕費等不動産所得にかかる必要経費に算入されるべき部分を右証言のみからただちに確定することは困難であり、他にこの点に関する証拠はないから、控訴人の右主張事実はこれを認めることができないものというほかはない。」
10 同七一枚目表四行目から次行にかけて「六六万五九三二円」を「六九万一二三二円」と、同五行目「五〇万二一九三円」を「五一万六五九三円」とそれぞれ改める。
11 同七一枚目表八行目から次行にかけて「二二一万二〇六八円」を「二一八万六七六八円」と、同九行目「一五七万八八〇七円」を「一五六万四四〇七円」とそれぞれ改める。
12 同七一枚目裏四行目と同七行目から次行にかけての「四一〇万二八一三円」をいずれも「四〇七万七五一三円」と同五行目「三五二万四一四八円」を「三五〇万九七四八円」とそれぞれ改める。
13 同七五枚目裏二行目「二二一万二〇六八円」を「二一八万六七六八円」と、同八行目「一五七万八八〇七円」を「一五六万四四〇七円」とそれぞれ改める。
14 同七七枚目表一〇行目と七七枚目裏九行目の「四一〇万二八一三円」をいずれも「四〇七万七五一三円」と改める。
二 そうすると、控訴人の本訴請求中、昭和四〇年分の更正及び過少申告加算税賦課決定に関する部分は、右更正及び決定中所得金額四〇七万七五一三円を超える部分の取消を求める限度においてこれを認容し、その余を棄却すべきであるから、原判決中これと異なる部分を右の趣旨に変更することとし、原判決中その余の請求を棄却した部分は、すべて正当であつて、この部分に対する本件控訴は、理由がないから、これを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第八九条、第九二条但書を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小河八十次 裁判官 内田恒久 裁判官 野田宏)